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弩の運用

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 映像出典:「英雄(HERO)」Jet Li Hero full movie HD (german)

武器としての弩

「弩」は「ど」とか「おおゆみ」と呼ばれる武器で、ヨーロッパでいえばクロスボウです。その歴史は古く、紀元前6世紀には機械式のクロスボウが作られていたといいます。中国において「弩」は戦国時代に使われ始めました。中国を統一した秦の始皇帝陵の兵馬俑坑からは保存状態の良い弩がいくつも出土しており、主力武器の一つだったことがうかがえます。

2002年公開の香港中国合作『英雄(HERO)』の中では、秦の多くの兵士、弩を射る兵士を弩徒兵といいますが、多くの弩徒兵が地べたに腰を降ろし、弩の弓の部分に足を掛けて背筋を使って弓を引き、矢を補給する係の兵士がそこに矢をセットして、一斉に矢を放つシーンが描かれています。

この弩の兵器としての利点は、大型で強力な弓ゆえに射程距離が長く、また重い矢を飛ばす事ができるので貫通力も大きく、照準を合わせやすい事から命中精度も良いという特徴があります。一方、短所としては大型で強力であるがゆえに機動性が劣り、速射性もよくありません。

そのため弩は、矢を射る担当、矢をセットする担当、矢を運ぶ担当など、千人規模の大部隊で運用しました。大部隊を展開し、相手の射程外から貫通力のある矢を雨のように降らすような使い方です。使われた方はたまったものではなかったでしょう。

弩の優位性と難点

弩の戦略的な優位性は、弓よりも取り扱いが簡単で技術的な習熟を必要としなかったため、弓騎兵のように熟練した兵士と馬を多数擁しておく必要がなかったことです。普段は農作業に従事している農民を戦の時に大量に動員して、弩を与えて大部隊を編成すれば、圧倒的な効果を発揮できました。

日本でも太宰府とか多賀城とかで多数見つかっておりいます。しかしながら、千人規模の大部隊を展開するには広く見通しのいい場所が最適であるため、中国の平原には向きますが、日本のような山がちで森林の多い地形には不向きでした。また、弓よりも構造的に複雑で、いくつかの組成の違う素材を組み合わせ貼り合わせて作っているだけに、大量に製造するには難しく、保管場所にも気を遣わなくてはなりませんでした。では、弩は日本においては役に立たなかったのでしょうか。

戦略兵器としての弩

広範囲に圧倒的な破壊力を発揮する弩は、運用規模といい、それを維持する技術的、経済的な国力といい、戦略兵器です。現在で言う核兵器のような存在です。日本では多賀城などの前線基地に配備されていましたが、実際の戦闘に活躍したというより威力を見せつけて反撃や抵抗を抑止するという効果のほうが大きかったと思われます。

弩の運用を可能にする政治戦略

弩を用いた戦略が可能だった大和は、弩の技術を導入できるだけの海外知識層との交流があり、弩と鉄の鏃(やじり)を持つ矢を大量に保有するだけの、鉄の交易ルートと財源を持ち、大量の弩と矢と保管できる施設を運営し、弩徒兵となる大勢の入植農民を動員できる大国だったということもできます。

実際、大和は朝鮮半島と鉄の交易を行い国内の鉄供給を独占しており、渡来人を受け入れ進んだ技術を導入しておりました。蝦夷地へは開拓と入植で人を投入し、戦があればその入植農民に最新の武器を与えて兵士として動員していたと思われます。弓馬の訓練をしていない平民足軽に武器を与えて戦力にするのは、大和の弩徒兵も、信長の鉄砲隊も、長州の奇兵隊も、またナポレオンの国民軍も同じ発想だといえるでしょう。

逆に言えば、交易と知識層の導入を確保していたからこそ、大和はその時代圧倒的な優位性を持っていたともいえるでしょう。

 

  

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